イケダ ハヤト著『武器としての書く技術』中経出版
はじめに
書く技術を武器に稼いでいる著者。2013年当時の書籍ではあるけれど、Webで発信する際の基本テクニックや、その価値にはまつわるものはあまり古臭くない印象。
個人的には発信の本質についてや、その基本的な価値が知りたくあった。稼ぐテクニックに関しても、今でも用いられる手法を解説していて、基本的なところは十分参考になった。
本書が役立つであろう人として、冒頭に「悶々とした人生に突破口を見出したい人」とある。書く技術がそれをもたらしてくれるのならよい。
web発信の前提
「はじめに」では、Webで文章を発表する際の前提がある。
今 までの 本 は、 伝える 人 が い て、 伝える こと が あっ て、 その 上 で、 どう 文章 を 書く のか、 という こと について 語っ て い ます。 つまり「 読者 が いる」「 伝える こと が ある」 という のが 前提 として ある わけ です。 目 の 前 の 椅子 に 座っ て いる 読者 に対して どういう 文章 を 提供 す べき か、 という わけ です。
しかし、 これから の 時代 は 文章 を ウェブ 上 に 発表 する という こと が 多く なっ て くる でしょ う。 意見 を 述べる、 人 を 感動 さ せる など、 何 かを 伝える には ウェブ を 使う こと が 前提 となり ます。 主戦 場 は ウェブ という 大海原 なの です。 その とき、 目 の 前 に 読者 は い ませ ん。 自分 で 集め なけれ ば いけ ない の です。
伝える相手などそもそもおらず、自分で集めないといけない。それはストリートライブに近く、たまたま通りかかった人をつなぎ留める力が求められる。
それらは「新時代の文章術に求められる四つの力」とまとめられていて、これがまさに「webライティング」ということか。
前述のように、個人的にはwebライティングというより、アウトプットよるコンテンツ制作を知りたかった。ただ、やはり文章を読んでもらう姿勢も必要で、それにまつわるものも有益だった。
発信のスタンスと読んでもらう工夫
一章は「Webで読まれない残念な文章」のケーススタディで、二章では細かなWebライティングの発展形がまとめられている。そこで気になったのは、発信の基本的なスタンスと読まれる工夫。それらをまとめてみる。
完璧主義をやめる
最大限 頭 を 働かせ た 末 に 紡ぎ 出さ れ た 言葉 なら、 どんなに 中途半端 で、 未熟 で あれ、 発信 し て おく べき です。 バカ だ と 思わ れ た って いい じゃ ない です か。 実際、 そこ が 自分 の 限界 な わけ です し。
人間 なんて どう やっ た って バカ で 無知 な ん です。 変 に 賢く 取り繕う なんて あり ませ ん。 自分 の バカ さ 加減 を 知り、 高め て いけ ば いい だけの 話 です。
完璧 で なく て いい の です、 今、 自分 が たどり着ける 限界 点 を 切り出し ましょ う。 バカ にさ れる 恐れ さえ 払拭 すれ ば、 執筆 は 自分 の「 現在地」 を 客観的 に 認識 する すばらしい 機会 と なる はず です。[中略]
小見出しには「人間なんてどうせバカ」とある。今の完璧にこだわっていれば、そもそもなにも記せない。自分の知力・実力を受け止め、高めていくこと。その姿勢がないと始まらない。
未熟だった頃の記録も役立つかもしれないし、倫理を犯さず発表すればよい。反対意見を否定せず、未熟を前提に世に投げかけていく。下書きを溜めてしまうのも一考したいところ。
発表するからうまくなる
[略] 注意 し たい のは、「 発表」 という プロセス が 重要 だ という こと です。 よほど で ない 限り は、 誰 も 見 ない ところ で 書き 続け て い ては、 文章 は うまく なり ませ ん。 他人 の 目 に さらさ れる こと が 重要 なの です。
これは個人的に刺さるもので、他人の目はかなり重要。見られることを意識していれば、自然とクオリティを上げようとしたり、自然と変化していくはず。それが耐えられないのは、自分の未熟さを受け止めていないからか、あるいは自尊心を懸けて才能を誇示しているからか。
いずれも処女作で世の中がひっくり返ったりしないし、だれもが未熟なところから始めている。アウトプットの熟達者は皆、特に三章にあるところは共通するはず。心構え、実践のテクニック、挫折せず継続するこつ等
他のブログに積極的に絡む
自分 の 言葉 を 広め たけれ ば、 まず 他 の 誰 かの 文章 に 反応 する こと です。[略]
これもブログが伸びない一因だった。自分の言葉を広めてくれるのは別の誰か。そのためには自分が接点を持つこと。同類との交流を発生・維持させられなければ、もう本当に何も変わらない。そして誰も見てくれないとクオリティも上がらない。
AIやアルゴリズムは恐らく、内容の良し悪しを主観的に見れないはず。判断材料は客観的な数字であり、それは他者がもたらすもの。自分か誰かの積極性から始まるのであり、それがWeb上での基本。
どういう文章がウケるか分析する
[中略]ぼく ら は ビジネス を する 際、 必ず 売上 や 経費 を 記録 し、 顧客 の 反応 や 声 を 参考 に し ながら、 小さな 実験 を 繰り返し、 最適 な 戦略 を 導き出し ます。 読ま れる 文章 を 書き たい と 願う の なら、 それ と 同じ こと を、文章 でも やる べき なの です。 分析 を し ない ブロガー は、 売上 や 経費 を チェック し ない 経営者 の よう な もの です。
「とにかく いい 記事 を 書い て いれ ば 多く の 人 に 読ま れる よう に なる」 という のは、 真実 では あり ませ ん。「 いい 記事」 という のは、 日々 データ を 分析 し、 外部・内部 環境 を 把握 し、 ああ でも ない こう でも ない と トライアル・アンド・エラー を 繰り返し た 結果、 はじめて 生み出せる よう に なる もの です。
これも自分はおろそかにしていて、フローのブログは二年経ってからアナリティクスを導入した。しっかりと他人の目に触れさせ、そこからフィードバックを受けること。そうやってトライアンドエラーをしないと改善されない。
クオリティの向上とアクセスの下積み。自分でお客さんを集め、ファンになってもらうこと。それを怠って嘆いても仕方ない。誰からも反応がないのも反応。それを前提にクオリティを上げること。そのスタンス。
書き続けて固定読者を獲得する
極論 すれ ば、 毎日 書き 続ける こと さえ できれ ば、 ブログ は 自然 と 人気 を 集め て いき ます。 多く の 人 が 人気 ブログ を 作る こと に 失敗 する のは、 それ は 結局、 継続 を 諦め て しまっ た から です。[中略]
ここでの「継続」は、少なくとも1年、基本的には5年、10年といった長期間の継続です。スポーツやビジネスがそうであるように、1年も続かないものが、成功するわけがないのです。
イケダ ハヤト. 武器としての書く技術 (中経出版) (p.112~). 中経出版. Kindle
これに関しては実践があって、現時点で二年はコンスタントに更新している。上述の解析を始めてみたところ、実はアクセスらしきものがあったりする。さすがに誰かは偶然認知してくれて、そこから読者になってくれるのだろう。こういったシンプルなことも重要か。しっかり上述のスタンスを維持し、地道な根気強さで継続をしていくこと。
おわりに
本書の「おわりに」では、「書くだけで人生は変わる」とある。
しかし、ただ「書く」といっても、適当に書いていればいいわけではありません。毎日フェイスブックやミクシィに日記を書いていても、何も生み出せない人もいます。一方で書くという方法で確実に人生を変えていく人もいます。
「書く」とひとことでいっても、ある程度のノウハウやテクニックが必要です。それを駆使すれば、誰だって人生を好転させることができるのです。
これまでの自分がまさにそうで、闇雲に努力しても効果はない。正しい努力が必要で、それを本書は教えてくれる。成功には成功の理由があり、正しい努力を理解し、基本・応用のテクニックを用いて継続すること。
初学者には結構な壁でも、こうやって先達がまとめてくれているだけ有難い。テクニック、努力、継続、その他諸々を理解し、悶々とした人生が変えられたらいい。書くという現代の文章起業。個人的に在宅で一旗揚げるにはこれだろう。
引用・参考文献
イケダ ハヤト.著 武器としての書く技術 (中経出版)